脳には細い血管が多く張り巡らされています。その血管に心臓から血液が送られることで栄養や酸素をもらっています。しかし、心臓から脳にたどり着くまでの血管の中に、
このようなことが原因で、脳に栄養や酸素が行き渡らなくなり、脳の細胞が死んでしまうのです。これが「脳梗塞」という病気の状態です。死んでしまった脳の細胞は、二度と元の状態には戻すことはできません。
また、「心臓で出来た血の塊が脳の血管に流れて血管を塞いでしまう」ことでおこる脳梗塞は、脳梗塞全体の60%を占めています。
さらに、脳梗塞は季節によってもおこりやすくなります。
特に夏と冬は起こりやすい時期です。夏は、汗をかくことで体が脱水状態になり血液がドロドロになりやすく、冬は知らないうちに水分が失われたり、入浴時に急に温度が変わるといった事があるためです。
その原因とされている主な病気は「高血圧症」「糖尿病」「脂質異常症(高脂血症)」と言われています。これらの病気と脳梗塞がどのように関係しているのかをお話しします。
心臓は血液を送り出すためにポンプのように動いています。このポンプの力が強いと「血圧が高い」とされています。強い力でずっと血液を送り出し続けると、血管は壁が薄いのでその力に耐えらず、血管の壁を厚くして対抗しようとします。そして、壁が厚くなることで元々柔らかい血管が硬くなってしまうのです。ずっと強い圧をかけ続けることで、今度は血管自体が傷ついてしまいます。そうすると、さらに血管の壁は厚くなり、細い血管までうまく血液が運ばれなくなってしまうのです。
私たちの体は、食事に含まれている糖分を分解してくれています。
しかし、食べ過ぎたり、甘いものを多く食べてしまったりすると糖分の分解が追い付かなくなってしまいます。すると、血液に糖分が多く含まれてしまい血の塊が出来やすくなってしまうのです。
コレステロールや中性脂肪という言葉を聞いたことがあると思います。
卵やバターといった食品を多く含む食事や高カロリーの食事を取り続けることによって、それらをうまく分解することが出来なくなってしまいます。そして、血液に脂質が多く含まれてしまい、血液がドロドロの状態になってしまいます。脂質は血管の内側に少しずつ溜まって血液が流れにくくなってしまうのです。
脳梗塞には急に発症してしまうものや、ゆっくり進んで発症するものがあります。
急に発症してしまうのは・・・
②心臓で出来た血の塊が脳の血管に流れて血管を塞いでしまう
ことでおこる脳梗塞です。
なぜかというと、血の塊が心臓で出来あがってしまっているからです。血液と一緒にあっという間に脳まで到達して脳の血管を塞いでしまうので、一気に酸素や栄養が途絶えてしまい重症になることが多いとされています。
起こりやすい時間帯は、眠っていた体が動き始めることで心臓が活発に動き出すため、朝起きた後が多いと言われています。
ゆっくり進んで発症するのは・・・
①血の塊が少しずつ溜まって血管を塞いでしまう
ことでおこる脳梗塞です。
なぜゆっくりと進むのかというと、血管自体に血の塊が少しずつ溜まっていくからです。少しずつ血の塊が溜まって、最終的に血管を塞いでいくため、急に脳梗塞になることはないのです。しかし、少しずつ血液の流れが悪くなることで、頭痛やめまいを起こすことがあります。発症しやすい時間帯は、血液に水分が不足してドロドロになりやすくなる睡眠中が多いと言われています。
また、以下のような特徴的な症状が共通して見られることがあります。
脳梗塞を発症してしまったあと、生殖機能はどうなるのでしょうか?
脳梗塞では片側のみに発症することがほとんどです。生殖機能を担っている神経は左右に1つずつ経路を持っているため、脳梗塞で左右どちらかの細胞が死んでしまったとしても、もう片方で補うことが出来るので、全く機能しないということはありません。また、性的な欲求自体はなくなることは少ないと言われています。しかし、脳梗塞により精神的に疲れてしまい欲求がなくなってしまうことや、麻痺が原因で心理的な問題が起きてしまい、生殖機能に影響を与えてしまうことが考えられます。
病院を退院した後、自宅に戻られる方、他の病院へ転院される方、施設に入られる方など退院後の生活はその方の希望や状況によって様々です。
その中でも、まず一番に気を付けるべきことは、脳梗塞の発症前と同じ生活習慣ではいけないということです。同じ生活習慣に戻してしまうと、また同じことを繰り返してしまいます。
そして、いままで病院で受けていたリハビリは、今後も受けるための選択肢があります。症状の程度にもよりますが、継続してリハビリを続けていくことで、回復へ向かう方もおられます。
⇒お医者さんの処方が必要になります。
自分で来院する必要があるため、ある程度自立していることが不可欠です。
訪問リハビリは自宅にリハビリスタッフが来てリハビリを行います。
施設へ通ってレクレーションを行ったり、リハビリを受けることができます。
職業に復帰することを目的としたリハビリを行います。
同居の家族とリハビリを行います。リハビリメニューは入院中のセラピストから指導してもらいましょう。
近年、徐々に普及してきているサービスです。入院中のようなリハビリを退院後に受けることができます。
退院後はご家族など周囲の方々のサポートも必要となってきます。リハビリを続けていくことも、どんな風に病院や施設を利用することができるのか、入院中に病院の医療相談員やケアマネージャーなどに相談されてみることをお勧めします。
脳梗塞は突然起こると思われている方が多いかと思いますが、実は脳梗塞には前兆が見られることがあります。
その前兆として「一過性脳虚血発作」という、脳に血の塊が詰まってしまい、一時的に脳の血流が悪くなってしまう病気があります。脳梗塞と何が違うのかというと、ここでできた血の塊はすぐに溶けてしまうため、30分程度~遅くても24時間以内には脳に血流が戻るのです。そのため、症状もすぐになくなってしまうので、気にしなかったという方が多くおられます。
では、なぜ前兆と言われているのかというと、この病気になった方のうち20%程度の方が3ヶ月以内に脳梗塞を発症し、そのうちの半数の方が48時間以内に脳梗塞を発症していると言われているのです。
それでは、どんな症状に気を付けたらいいのでしょうか?
基本的には脳梗塞と同じような症状が現れます。少しでもいつもと違うなと感じた時には、一時的なものだったからとそのままにするのではなく、一度病院で診てもらうことをお勧めします。
脳梗塞の原因は「高血圧症」「糖尿病」「脂質異常症(高脂血症)」といった病気であるとされています。つまり、日頃の生活習慣を見直してみることが第一です。バランスのとれた食生活を送っているか、水分は十分に取れているか、毎日でなくてもウォーキングなどの運動をしているかということが重要なのです。
脳梗塞になった方が再発する確率としては、発症から1年以内で5~8%、5年以内では30~40%の方が再発していると言われ、再発しやすい病気なのです。特に、「心臓でできた血の塊が脳の血管に流れて血管を塞いでしまう」ことでおこった脳梗塞は、最も再発しやすく、発症から3週間のうちに再発される確率も高いと言われています。
再発してしまうということは、前回とはまた違う部分の脳の細胞が死んでしまうということなのです。つまり、新たな症状が現れてしまうのです。このことで、さらに日常生活に支障をきたしてしまう可能性があります。また、再発した場合の症状は重症化することが多く、最悪の場合死に至ることもあります。一度治ったからといって決して安心してはいけないのです。
脳梗塞の原因が「高血圧症」「糖尿病」「脂質異常症(高脂血症)」といった病気であった場合、生活習慣を整えることが第一です。バランスのとれた食生活と適度な運動を心掛けましょう。また、病院で処方されている薬は、だいぶ良くなってきたからといって勝手に薬を止めてしまってはいけません。診察を定期的に受けて、処方された薬はしっかりと飲み、再発を防ぎましょう。脳梗塞の再発は日々心掛けることで防ぐ事ができるのです。基本的な考え方は再発予防も予防も同じですが、一度脳梗塞になられた方は再発しやすいとも言われておりますので、きちんと意識して対応策をとることが重要です。
まずは入院中の間に医師や管理栄養士、リハビリのスタッフである理学療法士・作業療法士などに退院後の生活習慣に関して、アドバイスをもらいましょう。
脳は様々な機能を決められた場所で担っています。そのため、脳梗塞で細胞が死んでしまった場所やその大きさによって様々な後遺症が出てきます。ここではよく見られる後遺症についてお話しします。
大まかにいうと「麻痺」とは神経になんらかの障害が起きていることを指し、「運動麻痺」とは運動つまり身体を動かす筋肉につながる神経に障害が起きていることを指します。
つまり頭では手や足を動かそうとしているのに、身体が上手く動かないということです。
ひどい症状の場合は頭で手足を動かそうとすることもできないこともあります。
われわれ人間は当たり前のように、目で物体をとらえ、色や形状を認識できます。耳で音を、鼻で匂いを、口では味や温度などをというように様々な外からの刺激に対して、それぞれの部位で感じたものを脳に伝え、脳でそれらの情報を認識しています。
もちろん手足からは何かに触れていること、その温度、その痛みなど様々な情報を感じ、脳に伝えています。それ以外にも膝が曲がっていることや足首が今どのようになっているかなどの情報も目で見なくても感じることができます。
このような感覚が上手く感じることができない状態になります。
前述したように、外からの感覚をうまく脳で認識することができません。
そのためお風呂に入るときにたとえ熱湯に足を突っ込んでいたとしても、感覚を感じることがなく、やけどをしてしまうということもあります。
それ以外にも手足の関節がどのようになっているかを感じる感覚が低下してしまった場合、立っているときや歩いているときに自分の身体がどのように動いているかがわからない状態になります。そのため自分の身体がどのような状態になっているかを目で確認しないとわからないということになるのです。
「注意」と聞くと、「注意する=気をつける」という意味が一般的でしょう。ここでいう「注意」とは、「注意を向ける=集中する、目を向ける」という意味合いのほうが強いかもしれません。
例えば、右側から人が歩いてきてぶつかりそうになった時、視覚に何の異常もなければその人に気付いて避けるはずです。しかし、脳に障害を受けたことでその見えてるはずの人を認識できず、気づかないまま歩いてしまい、結果としてぶつかってしまいます。ほかにも「注意散漫」という言葉があるように、同じことをずっと続けて行うことができず、キョロキョロしてしまうというのも「注意障害」の1つです。また、大勢の友人たちと話していると、みんなが話している状況の中で自分に誰かが話しかけたとしても、どの人に注意を向ければいいのかわからず、話を聞く事ができないなどの症状があります。
「失語症」とは、脳に障害を受けたことで、私たちが普段当たり前のように行っている、「話す」「聞く」「読む」「書く」ということができなくなってしまう病気のことです。
例えば「リンゴ」という言葉があります。これを初めて見たとき、すぐに「リンゴ」だとわかる人はいるでしょうか?きっと「赤くて、丸いもの」その程度だと思います。それから「リンゴ」という名前を知り、「リンゴは赤くて丸いもの」「リンゴは甘酸っぱい味がするおいしい食べ物」「リンゴは果物」等というように、情報が増えていくのです。このように、私たちは得た情報を、脳の中にあるたくさんの引き出しに整理し、何度も引き出しから出し入れするうちに、当たり前のように使えるようになっているのです。しかし、脳に障害を受けたことで、その引出しを開ける事ができなくなったり、必要な引出しが分からなくなった時、うまく話せない、話を理解する事ができないなど、今まで当たり前のようにできていたことができなくなってしまうのです。
「構音障害」とは、口や舌、声帯等話すために必要な筋肉の麻痺が原因でうまく話せない病気です。息が漏れたような声になる、力が入りすぎて声が出せないなどの症状がみられます。では前述した「失語症」とは何が違うのでしょうか?どちらも話せないんだからと同じように感じるかもしれません。
では、同じ「リンゴ」を例に挙げてみます。「構音障害」は「リンゴは赤くて丸いもの」「リンゴは甘酸っぱい味がするおいしい食べ物」「リンゴは果物」等という、今まで得た情報を引き出すことには何の問題もありません。問題になるのは、声に出すという部分だけなのです。それでは、口を開けたまま舌を動かさずに「リンゴ」と言ってみてください。うまく言えましたか?少し大げさな方法でしたが、きっとうまく言えなかったと思います。発声には唇の形、下の位置、息を出す、声帯の動き等、様々な部分が同時に関わることで行うことが可能となっています。何か1つでも欠けてしまうと声を出すことが難しくなってしまうのです。
「嚥下」という言葉は、聞き慣れないと思います。簡単に言うと「食べ物を飲み込む」ということです。皆様はこの食べ物を飲み込むまでの一連の動作を考えながら食べていますか?食べ物を見て、口の中に入れて、口を閉じて噛んで、のどの方に送り込んで、飲み込んで・・・こんなことを考えながら食べている方はいないと思います。「嚥下障害」とは、口や舌等の麻痺によって、この一連の流れが上手く行えなくなり、毎日当たり前のようにしている食事ができなくなってしまうのです。
例えば、口を開けたまま食事をすると、口に入れた食べ物はどうなるでしょうか?言わずともわかるかと思いますが、口からボロボロとこぼれ落ちてしまいます。では、舌を動かさずに食べ物を噛んでみると?今度は食べ物が口の中に広がってしまい、飲み込みにくくなってしまいます。このバラバラになった食べ物を飲み込もうとすると、気管に入ってしまいむせてしまいます。この気管に入るという状態が最も恐ろしいのです。なぜなら、むせるということは気管に入った食べ物を出そうとしているので、それ自体は問題ありませんが、そのまま気管に入ってしまうとその先は肺です。食べ物が肺に入ることで、肺炎を起こしてしまいます。「嚥下障害」はこのような危険なリスクを伴っているのです。
「認知症」という言葉は誰もが1度は聞いたことのある病気だと思います。「認知症」は脳が小さくなってしまうことで、様々な症状が現れる病気です。
では、その症状をご存知でしょうか?例えば、私たちは、今の季節や今日が何月何日ということ、家族の名前、今いる場所というのは当たり前のように答えられると思います。しかし「認知症」になってしまうと、冬なのに夏と言ったり、当たり前に答えられるはずの事ができなくなってしてしまうのです。また、日常生活で当たり前のように使えていた、箸の使い方がわからなくなったり、さっき食べたはずの食事を食べてないと言う、物を取られたと言うなどの症状もあります。顔の表情や言葉が乏しくなってくることも特徴です。
周りから呼びかけても反応が鈍くなったり、周囲の状況を正しく理解できなくなってしまいます。重症化してしまうと、周りからの呼びかけや刺激にも反応しなくなってしまいます。
医療では病気がどのくらい回復するのかという見通しのことを「予後(よご)」と呼んでいます。
脳梗塞の予後には、発症した日からの経過日数や年齢が大きく関わると言われています。
一般的に治療やリハビリの開始は、発症から早ければ早いほど回復の可能性が高いとされ、年齢は若いほうが回復の可能性が高いとされています。
最近の医療の発達により、発症から3時間以内に治療を受けることができれば、後遺症を残さずに治る可能性が高いと言われています。しかし、脳の細胞が広い範囲が死んでしまった場合、死に至ることもあります。
リハビリに関しては、発症から2~3ヶ月の期間が最も回復しやすく、発症から6ヶ月頃には回復が停滞すると言われています。しかし、予後というのはあくまで予測であるため、6ヶ月を超えてもリハビリを続けたことで回復した方々もおられ、全く回復しないわけではありません。特に発症直後に長い間意識のなかった方や若くして発症された方では6ヶ月以降の回復を記録したという研究も多く発表されています。
しかし、脳梗塞になった方のうち、日常生活に支障のないくらいまで回復する人は20%程度であり、何らかの後遺障害を残してしまいます。高齢であればあるほど、介護が必要になったり、寝たきりになってしまうことが多いというのも事実です。
私たちは生活を送る中で、立つことや歩くこと、座ることなど当たり前のように行っています。皆様の中に「歩き方」を意識して、普段から歩いている方はいますでしょうか。右足を出した後は左足を出して、左足が着地したら・・・。このようなことを意識して行っている方はいないでしょう。人間は「歩き方」を1歳頃から練習を開始し、失敗と成功を何度も繰り返しているので、ほとんど無意識に歩くことができます。例えば坂道を上るときや下るとき、斜めになっている路面、布団やクッションなどの上を歩くときなど環境に合わせてほぼ無意識に歩き方を変えているのです。
これと同様にベッドや布団から起き上がったり、いすなどに腰かけたり、立ち上がったりという動作は無意識に行われています。椅子に座るときに体を曲げて、膝を少しずつ曲げて・・・という動きを意識している方はいないでしょう。このような無意識で行う人間という動物として基本となっている動作を基本的動作といいます。
基本的動作の獲得のために、実施していく治療が理学療法ということになります。
理学療法とは、基本的動作の獲得のために、関節や筋肉の動きを良くしたり、麻痺などで動きにくくなっている神経や筋肉の動きが改善するように治療を行っていきます。それにより基本的動作の回復や獲得ができるよう動作の練習を繰り返し行っていきます。
脳梗塞で片側の手足に麻痺が出てしまったとき、今まで使えていた手足がうまく動かなくなってしまい、当たり前だった生活はガラリと変わってしまいます。
皆様も想像してみてください。私たちの生活は当たり前に動く手足があって成り立っています。例えばペットボトルのお茶を飲むとき、キャップを空ける時にはキャップを空ける側の手だけでなく、反対側の手でペットボトルを支えています。他にも箸で食事をするときも箸を操作する手だけでなく、反対側の手で茶碗や皿を支えたり、持ったりしています。これは私たちがこれまで日本の生活環境で行ってきた「当たり前」です。他にもお風呂に入る、トイレで用を足す、パジャマに着替える、スマートフォンやパソコンを操作するなど、たくさんの「当たり前」があります。これは当たり前に感じているかもしれませんが、手足が自由に動くからこその「当たり前」なのです。
片方の手足の自由が少しでも失われると、これらの「当たり前」が当たり前ではなくなります。
作業療法とは、入浴や食事など日常生活に支障が出てしまった方に、手工芸や園芸、レクリエーションなど作業を用いたリハビリを通して、治療を行っていく中で体の機能の回復を図り、自分らしく暮らせるよう支援をしています。
私たちが無意識に行っている生活には、食事、整容、更衣、トイレ、入浴、排せつ管理、コミュニケーションなど様々な要因が関わっています。これらを総称して日常生活活動(ADL:Activity of Daily Living)と言います。作業療法では、このADLがご自分でできるようになるための治療を行う方法ということになります。
具体的にはADLの改善につながるような物品を使った運動や実際のお風呂などで普段行う環境での練習なども行っていきます。
私たちは言葉を使って気持ちや考えを伝え、コミュニケーションをとりながら生活をしています。そして生まれてから今に至るまで、成長とともに知識や経験を身に付けながら、脳の中にあるたくさんの引出しの中にその情報をためています。しかし、脳梗塞によってその引出しを開ける事ができなくなったり、必要な引出しが分からなくなった時、うまく話せない、話を理解する事ができないなど、今までできていたことができなくなってしまうのです。
言語聴覚療法では、ご家族やご友人、職場でのコミュニケーションにお困りの方が、自分らしい充実した生活を送れるようリハビリを通して支援をしています。また、食べることが難しくなった方へのリハビリもしています。
「聞く・話す・読む・書く」といった事が難しい方には、絵や物を見て名前を答えたり、言われたものを選ぶ、名前を書いてみるという訓練方法や、書かれているものの名前を読むという訓練方法があります。言葉以外で気持ちを伝える方法を身に付けていくことも、周りの方々とコミュニケーションを取るうえで重要になりますので、訓練の1つとして行っていきます。
口唇・舌・頬など声を出すことが難しい場合は、声を出すための方法を訓練しながら、声を出す方法を体に覚えさせていく訓練を行います。
食べることが難しくなった方には、口の体操を行ったり、食事量の調節や食べるときの姿勢などの指導や、食事にとろみをつけて飲み込みやすくするといった方法を取り入れていきます。
脳梗塞の後遺症リハビリについて、症状別に解説します。
脳梗塞などを起こした患者さんがリハビリをして、麻痺が回復したといった話をよく耳にするかもしれません。私たちも実際に患者さんの経過をみていて、間違いなく患者さんの運動麻痺は徐々に回復しますし、患者さんご自身も回復を実感されています。
ではなぜ運動麻痺は回復してくるのでしょうか。
脳は神経でできています。脳梗塞などの脳の病気になった後の脳の中は浮腫を起こします。つまり「むくんでいる」状態になります。本当に障害された場所と浮腫でうまく機能できなくなっている場所ができるのです。浮腫した場所はむくんでいるだけなので、徐々にそのむくみがとれてくることにより、神経が上手く動くようになってきます。
そのため麻痺が回復してくるのです。
私たち人間は効率的に動くことを学習します。動かしにくかったり、痛みがある身体の一部分野があれば、それを代償してスムースに身体を動かそうとします。わざわざ痛みがある方法や動かしにくい方法を何度も行いません。身体の片側に麻痺があれば、当然その麻痺を代償する動きとしてもう一方の元気に動く方の身体を過剰に使用します。そうすると麻痺したほうの身体を動かす機会は減りますし、本来ならば練習の機会になる部分が減ってしまいます。
答えは簡単です。「使っていないからうまくならない」のです。
感覚とは簡単に言うと「外からの刺激を脳でどのように正しく感じるか」です。
繰り返し刺激に対して、どの程度の感覚かを何度も感じていただくことで徐々にそのほかの感覚による代償も含めて、感覚を正常に近づけていくということになります。
実際に感覚神経が機能しなくなっていれば、感覚を感じることはありません。
「注意障害」はリハビリを通して訓練することができますが、何よりも大切なのは関わり方です。先ほどお話ししたように、「注意障害」といっても様々な症状がみられますので、まずは話をしたりする環境を整えることが重要です。
例えば、右側に注意を向けられないのであれば、左側から話しかけることが円滑なコミュニケーションを行う上で大切です。逆にわざと右側から話しかけてみることで、できるだけ右側に注意を向けさせるようにすることも必要です。また、私たちも何かに集中したいときに騒がしい部屋で集中することはできません。ということは、「注意障害」の方であればなおさらです。できるだけ静かな部屋で関わることで、注意を向けるものがわかりやすくなります。また、物が多く置いてあるところでは注意を向ける対象が増えてしましますので、なるべく物を置かない環境での関わりが望まれます。
「失語症」には多くの症状があり、みんな同じ症状が現れるわけではありません。描かれている物の名前を言うという訓練や、言われたものを選ぶというような訓練を、何度も繰り返して行うことで、回復へ向かうことも報告されています。また、例えばうまく言葉が出てこないけど、人が話していることはわかるという方であれば、普段よく使うものの絵や文字を書いたノートを使って、補助的なコミュニケーションを取るためのアイテムとして取り入れていくこともあります。
前述したように声を出すためには様々な器官が関わっています。そこで、声を出しにくくなっている原因に対してリハビリを行っていくことになります。例えば、唇と舌に麻痺が出てしまったとします。この場合は、唇をすぼめたり開けたり、下を上下左右に動かしていくことで、麻痺の改善を図ります。また、声を出すために必要な、口の開け具合や唇の形、舌の位置を鏡で確認しながら何度も繰り返し行い、思い出させていくのです。
「嚥下障害」では肺炎を起こす恐れがありますので、食べ物を使用しない訓練と、実際に食べ物を使用して行う訓練があります。
食べ物を使用しない訓練とは、例えば、口をすぼめたり、舌を左右に動かしというような口の体操を行います。また、「ぱ」「ら」「か」を使った発声練習を行います。これらは、毎日食事の前に行うことで、食べ物を飲み込みやすくすると言われている体操です。
食べ物を使った訓練としては、ゼリーやとろみ剤でとろみのある食事を使用し、実際に食べる訓練を行うのですが、1人1人の状態にあった物を使用して訓練を行います。ここでは、食べ物の形状も大切ですが、環境を整えることも重要です。例えば、嚥下をする際のベッドや車いすの背もたれの角度やスプーンの大きさを変えたりして、一口量の調節を行います。
認知症のリハビリでは、今までの生活環境や歴史、趣味・関心といった内容を重視して行います。例えば、「認知症」は昔のことはよく覚えていることが多いという特徴があります。そこで、幼いころの思い出を思い出しながら話してもらい、記憶の回復と心の安定を図ります。何人かの集団で行うことで、コミュニケーションを促進させることも、他者との関わりを増やすことができるため、引きこもりがちになることを予防できます。さらに、音楽を聴いたり、音楽に合わせて簡単な楽器を使ったり、またカラオケで歌うことで、脳を活性化し、リラクゼーション効果を得る事で、認知症の症状を改善させることができます。
ここで重要なことは、残っている能力を維持しながら症状を遅らせ、日常生活で支障となっている症状を軽くするということです。
施設や病院に通ってリハビリを受ける方法は、
①医療保険を使って外来リハビリを受ける
②護保険を使って通所リハビリ・通所介護を受ける
③自費でリハビリを受ける
という方法があります。
①医療保険を使って外来リハビリを受ける
自分で病院に通って、外来のリハビリを受ける場合、当然医師からの診断が必要です。また近年では、医療保険での外来リハビリを、介護保険の通所リハビリや通所介護に移行するというような国主導の動きがあり、外来リハビリを積極的に実施している病院は少なくなってきています。またリハビリ自体も行う事ができる期間が決まっているため、外来リハビリにずっと通い続けることはほとんどできなくなってきています。
②介護保険を使って、通所リハビリ・通所介護を受ける
通所リハビリでは医師の診断が必要であり、回復期病院のような専門職が多く配置されているのが特徴です。入院された方が自宅に帰った直後から、手厚いリハビリが受けられるように通う施設として存在しています。そのため、利用開始時には手厚いリハビリが受けられる体制をとっている施設が多く、入院環境から自宅での生活環境への変化をなじませる部分を担っています。
③自費でリハビリを受ける
脳梗塞リハビリステーション福岡でのリハビリがこれに当たります。自費でリハビリを受けることのメリットは、保険制度の枠組みにとらわれない点です。公的保険制度ではリハビリの量や質が制度によって決められています。そのため、リハビリを提供したくでも保険制度を使用している限り特別扱いはできません。自費でリハビリを受ける場合、保険制度に捉われないため、リハビリの量や質を自由に決めることができるのです。徐々に日本中でこのようなサービスが広がってきています。
リハビリを行う病院は大きく、急性期病院と回復期病院に分けられます。
急性期とは脳梗塞になられた直後から1ヶ月~長くて2ヶ月程度のこととされており、一般的に急性期は病気が安定していない時期で、症状の進行・悪化が起こり得る時期とも言えます。また、回復期とは発症して1ヶ月たった頃から約6ヶ月たつ頃を差します。一般的に回復期は病気が安定した時期とされています。
近年では医療の発達などもあり、急性期病院での入院期間は短縮される傾向があり、より早期に回復期病院に移ることが増えています。一昔前では、急性期病院にてリハビリテーションはほとんど行われないことがありましたが、最近ではより早い時期から積極的にリハビリを開始することが推奨されてきています。(どんな状態でも動かしたほうがいいということではありませんので、必ず医師の指示に従う必要があります。)
急性期病院のリハビリは、病気の治療のため安静にしなければならない患者様の安全を確保しながら行う必要があります。そのなかで、可能な限りベッドから離れる時間を作り、少しでも座ったり、立ったりできるようにサポートしていきます。そのため、顔色や気分を伺いながら、血圧や体温などに注意して実施していく必要があります。症状が安定している方には、回復期と同じようなリハビリを行っていくことになります。
回復期病院のリハビリは、病気が安定しているため、積極的に実施することが必要とされます。そのため、脳梗塞になった後に医療保険を使って、最も長い時間リハビリができる施設ということになります。リハビリテーションの専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚療法士、ソーシャルワーカーなど)が豊富に配置されているのも特徴です。ここでリハビリをして、自宅に帰れるように練習をしていくことになります。具体的には、脳梗塞後遺症の程度と、自宅の環境や家族などのサポートなどを踏まえて、自宅に帰ってからの生活がきちんと行えるようにリハビリをしていくことになります。ここで難しいのが、脳梗塞後に起きた症状がどのくらい回復しているのかということと、リハビリができる期限が病気によって決められていることです。医師やリハビリテーションの専門職は、患者様の状態や回復具合を見ながら、退院時期の調整を行っていくことになります。
自宅でリハビリを受ける方法としては、
①介護保険を使用して訪問リハビリを受ける
②自分一人もしくは家族とリハビリを行う
という方法があります。
①介護保険を使用して訪問リハビリを受ける
訪問リハビリでは、自宅という慣れ親しんだ環境かつ実際に生活する環境での訓練ができるというのが最大のメリットです。自宅での生活で見えてくる課題に対して、どんなに施設などで同じような環境を作っても、実際の環境に勝るものはありません。自宅で実際に生活している環境の中で、繰り返して練習することを希望される方には、最も良いサービスになるでしょう。
介護保険を使用して訪問リハビリを受けるためには、介護認定を受けておく必要があります。また医師による診断も必要となります。詳しくは病院のソーシャルワーカーかケアマネージャーにお尋ねください。
②自分一人もしくは家族とリハビリをする
環境やケアプランなどに左右されず、いつでもどれだけでも実施できることが最大のメリットです。また、入院中や介護サービスをご利用の場合は、担当のセラピストに自宅でのリハビリメニューの紹介をお願いすれば必ず作ってくれると思います。ぜひ積極的に自宅でのリハビリメニューを紹介してもらいましょう。またリハビリの頻度は効果に関係します。正しい方法で練習を繰り返すことは改善への近道です。
改善を目指すのであれば、必ず実施していきましょう。
脳梗塞とは
脳梗塞の予防
脳梗塞の後遺症
脳梗塞のリハビリ
症状別のリハビリ
リハビリを受けられる施設